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HuluやTVerなどの日本最大級の動画配信を支える株式会社PLAYが運営するテックブログです。

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Inter BEE 2022 セッション「コネクテッドTVとリニア配信サービスの最新海外事情から見えてくる“メディアの本質”」レポート

おはこんハロチャオ~!平日ヒロイン、PLAYのアイドルこと、Z世代のうさぎです🐰
わたしはエンジニアではないので特定の技術を利用した具体的な実装の内容ではなくて、ビジネス向けな目線で紹介させていただければと思います!

今回は2022/11/16に開催されたInter BEE 2022 のセッション「コネクテッドTVとリニア配信サービスの最新海外事情から見えてくる“メディアの本質”」についてのレポートです! Inter BEE とは日本随一の音と映像と通信のプロフェッショナル展として、コンテンツビジネスにかかわる最新のイノベーションが国内外から一堂に会する国際展示会です。

Inter BEE 2022

セッション概要

従来の地上波や衛星放送に沿って番組を視聴するだけのテレビから、近年の動画配信サービスの視聴者数増加などに伴って、コネクテッドTV(CTV)の普及が進むようになりました。それに伴い、欧米のメディア業界ではあらたなビジネスモデルが拡大されていくようになりました。
また、飽和状態であるNetflixなどのSVODに代わり、米国では「FAST」に注目が集まっています。
登壇者である海外事情に詳しい専門家たちに、欧米の現状からメディアの本質について話していただきます。

登壇者

  • 薄井 裕介 氏 株式会社TBSテレビ メディア企画室 上級専門職
  • 園田 公一 氏 Media Tech ELSI R&D 代表
  • 高澤 宏昌 氏 株式会社TBSテレビ メディア企画室 担当部長

セッションレポート

そもそもCTVとは何なのか

Connected TVの略称で、インターネットと接続したテレビのことです。
代表的なCTVとしては以下3つがあります。

  • テレビ自体がインターネットに直接繋がっているテレビ
  • Amazonの「Fire TV」やGoogleの「Chromecast」、Appleの「Apple TV」といったデバイスを繋いたテレビ
  • PlayStation(PlayStation 3以降)やXbox(Xbox 360以降)などのゲーム機やネット対応のブルーレイプレイヤーなどの外部機器を経由したテレビ

CTVは若者のテレビ離れやテレビからネットへの移行などにより、急速に伸びています。 CTVの普及は、大画面でストリーミング配信を見る楽しみや、AVODの市場へも影響を与えています。

従来のVODサービスにはどんなのがあったか

SVODSubscription Video On Demandの略称)
定額制見放題動画配信のことです。

AVODAdvertising Video On Demandの略称)
無料広告付動画配信のことです。

TVODTransactional Video On Demandの略称)
都度課金型動画配信のことです。

SVOD+AVODのハイブリッド型
広告と課金を組み合わせて収益化している配信のことです。

海外で流行っているあらたなリニア配信サービスは何があるのか

FASTFree Ad-supported Streaming TV の略称)
無料のストリームTVのことです。AVODの進化形で、オンデマンドの配信ですが、複数のリニア・チャンネルを同時に配信します。無料広告型のため広告表示によって視聴が可能です。独自の編成で既存の放送局の編成に連動しません。

vMVPDvirtual Multichannel Video Programming Distributor の略称)
有料のストリームTVのことです。FAST同様に複数のリニア・チャンネルを同時に配信します。FASTとは異なり有料課金型のため月額課金によって視聴が可能です。既存の放送局に連動します。

日本の民放リアルタイム配信
FASTにもvMVPDにも属しません。「既存の放送局に連動」し、「無料広告型」です。

米国市場はどのような変化があったのか

数年前までの動画配信視聴デバイスはPCやモバイルが主流でしたが、現在はテレビ画面がターゲットになってきています。
視聴者はテレビに求めることが高価なCATVからCTVへ変わり、それに伴い、広告主もCTVへ移行するようになりました。
実際に米国のCTVの広告費は2020年から急激に成長しており、2022年は2.8兆円にまでのぼっています *1

米国のCTV視聴デバイスは「Roku」が4割を占めています *2
「Roku」の収入の柱としては、デバイス自体の販売収入である「プレイヤー収入」と、「Roku」がバンドルしたプラットフォーム事業者からの収入・広告費である「プラットフォームの収入」の2つです。
2020年頃から急激にプラットフォーム収入が伸びており、この「Roku」の急激なプラットフォーム収入の状況から、メディア事業者がCTVデバイス業界へ続々と参戦するようになりました。
たとえばComcast、Comcastは最大のCATV事業者ですが「XClass TV」というCTVを販売しています。 メディア企業でありながらデバイス販売することでプラットフォームでも直接的にユーザーとの接点を作り、あらたな「Direct-to-Consumer(D2C)」のビジネスを展開しています。

米国の配信プラットフォームにおける収益モデルとそのサービスはどうなっているのか

主にFAST、SVOD、AVODの収益モデルがあります。

まず、米国の代表的なFASTのサービスに「Pluto TV」と「Tubi」があります。
「Pluto TV」は2014年にサービス開始され、2019年にCBSが買収しました。 「Pluto TV」はリニアチャンネルを多数用意しています。
「Tubi」は「Pluto TV」と同時期の2014年にサービス開始され、2020年にFOXが買収しました。 「Tubi」は特にスポーツ番組に注力しています。
どちらもFASTの配信のため「無料で見たい」ユーザーへの人気が高いプラットフォームです。 そのため広告主も増えており、現在は「Pluto TV」も「Tubi」もメディア企業の重要プラットフォームとしてなりたっています。

米国における「SVODとAVODのハイブリッド型」の代表は「Hulu」です。 もともと「Hulu」はYouTubeの対抗手段としてできた無料のプラットフォームでしたが、当時Netflixがかなり盛んだったため、SVODもあわせたハイブリッド型へ方針転換しました。

SVODでの販売にこだわっていたNetflixも「SVODとAVODのハイブリッド型」になることが発表されました。 FASTのプラットフォームも広がったことで、ユーザーのプラットフォームへ求める傾向が変化していることが想像できます。 NetflixとしてもAVODを取り入れることで安価な価格帯で提供し、ユーザー層をより広めていこうとしています。

現在の状況としては、SVOD、AVOD、FASTの3つの収益モデルを1つのプラットフォームの中で対応することで、様々な視聴者を取り入れていこうとする動きが各プラットフォームから見えています。 その一方で3つのモデルすべてが含まれているプラットフォームが乱立しているため、視聴者が選ぶのが大変といった問題も出ています。

米国のメディア業界ではCATVからCTVへユーザーが流れたことをきっかけに、従来のビジネスモデルとは異なる方向へ転換していき、プラットフォームの収益モデルもSVODの飽和状態からあらたにFASTやvMVPDへユーザーが集まるといった目まぐるしい変化が繰り広げられています。

欧州インターネット業界の動きはどうなっているのか

2018年に欧州放送連合はPSB(Public Service Broadcaster)からPSM(Public Service Media)へ呼称を変更し、デジタルビデオブロードキャスティング(DVB)の規格の変更も開始しました。
DVBの規格変更は、放送独自の技術ではなくインターネットも融合した技術にすることを目的としています。 具体的には電波の中にインターネットのパケットが流れるといったIPを中心とした規格が作られています。
このように欧州では業界全体で考え方を切り替えるようになりました。

日本のCTV市場はどうなっているのか

日本のCTVの広告市場は急速な成長を示していますが、北米ほどではありません。 日本のCTVの割合も過半数を超えるようになってはきていますが *3、8割を超えている北米と比較すると、物足りない状況ではあります。

事業者の動きとしてはJCOMが新型のチューナーレスストリーミング(Set Top Box)を販売、ドン・キホーテがチューナーレスのスマートテレビを販売といったように全体的にCTVに対して前向きな動きがうかがえます。 その一方、北米の「Roku」のような誰もが知っているようなデバイスはまだない状態です。

日本のCTV市場としては、今後急速に伸びていく可能性はありつつも、北米と環境が異なっている以上、全く同じような状況になるとも言い難い現状でもあります。

欧米で注目が集まっているFAST、日本での可能性はどうなのか

日本でFASTのビジネスモデルで配信をしているのは「Abema」です。 そして「Abema」はFASTだけではなく、SVODの「Abemaプレミアム」、AVODの見逃し配信とFAST+SVOD+AVODの3層構造で提供しており、まさに海外の情勢を先取りしている事例です。

TVerにて民放のリアルタイム配信が開始されましたが、従来から各民放が運営しているVODサービスと連携しているかと言われれば、そうではありません。 まだ「Abema」のようにワンストップでFAST、AVOD、SVODを提供は進んでいないのが現状です。

このように日本としてはFAST分野の取り組みも少なく、FAST+SVOD+AVODの構造での提供も「Abema」だけです。 お金と人材と時間があれば他事業者も取り組めるとは思うので、今後、増えていく可能性はありそうです。

まとめ

現在は放送電波からインターネットへの変換点に立っています。 CTV、FASTと海外の事例含めて様々紹介しましたが、それが成功事例ではありません。 海外も思考錯誤しながらあらたなサービス、あらたなビジネスモデルを取り入れています。 日本も環境の変化とともに進化していけるように考えていきましょう。

最後に

CTVとFASTを中心に海外事情について聞くことができました。 わたし自身、動画配信事業の会社に所属しているため、FASTなどのリニア配信は知っているつもりでいましたが、民放同時配信が最新技術の先駆的な取り組みだと思っていました。 しかし、海外は数年前からすでにFASTの提供は始まっており、市場としても急速に伸びていることを知り、まだまだ日本は伸びる可能性を残していると感じました。

いま話題になっているFAST、弊社PLAYではFASTも同時配信も実現可能なクラウドプレイアウト「KRONOS」を提供しております。 実際に民放の同時配信にも「KRONOS」が使用されています。

そんな弊社では、2023年2月10日に渋谷ストリームホールにて動画配信業界の動向や「KRONOS」を含む最新技術をトークセッションやブースで紹介するビジネスカンファレンス「PLAY NEXT 2023」を弊社主催にて実施します。 トークセッションでは、インターネット、放送局、動画配信業界から豪華ゲストをお招きし、ここ数年で大きく変化し続ける動画配信業界のリアルを発信、先端技術のご紹介や動画配信の未来への提言、米国での業界最新情報など、内容盛り沢山でお届けします。 ぜひ、ご興味ある方はご参加をお待ちしております!

event.play.jp

以上、うさぎブログでした🐰